弁護側の証人

弁護側の証人 (集英社文庫)

弁護側の証人 (集英社文庫)

いつかの朝日の書評に載ってたので買ってみた。面白くなくて、途中で読むのを止めそうになったけど、文庫の帯に「道尾秀介氏大絶賛」と書いてあったので、最後まで読んで面白くないことを確認したら、今後、道尾秀介の作品は絶対読まないぞと決めて、とりあえず最後まで読むことにした。もっとも、これまで道尾秀介の作品は1作も読んだことはないけど。
以下、ネタバレが含まれますので、ご注意を。
ごめんなさい、道尾さん。やられましたよ。帯に書いてあった「読者を欺く超絶トリック!」の意味が分かりましたよ。第十一章でガツンときました。もっとも、第十一章が始まる205ページでは自分が瞞されたことにまだ気づきませんでした。やっとそれと知るのは223ページでした。人によって気づき方に早い遅いがあるでしょう。18ページかかった私は遅い方だと思います。
でも、「やられた」感が落ち着いてしまうと、作品上の欠陥が目につきます。たぶん、欠陥だと僕は思うのですが、もしかすると欠陥ではなくて、単に僕の読解力がないだけかもしれません。それはなにかというと、なぜ、緒方警部補が再捜査を決意したかの理由が分からないのです。1審の中で被告が何かに気づき、それを警部補に説明したことが契機になっているはずですが、警部補がそれまでの自分の捜査を否定し、再調査を決意するに足るどういう説明だったのか明らかにされていないのです。僕にはそう思えるのだけど、違うのかなあ。
それと、第十一章で驚かされたこと(誰が被告か読者を瞞すこと)は、小説テクニックとしてはすごく面白いけど、ストーリーとは何の関係もないんだよなあ。真犯人が予想外とかいうことで驚かせるのとは全く違うから。
でも、第十章までの、「最後まで読んでもどうせ面白くないだろう」という僕の予想は見事に外れ、作者の仕掛けたトリックにまんまと嵌ってしまいました。少なくとも、読んで損はない。