金曜日の帰り道、夜8時半、チャリで帰宅していた。街なかのバス停を通りかかると、ベンチに女子高生が一人座っており、5mくらい離れた車道にはオッサンが立っていた。オッサンは「どうせ、途中までだから」と大きな声で女子高生に話しかけていた。女子高生はニッコリ笑っていた。少なくともそう見えた。瞬間的に僕が思ったのは、家が近所のオッサンが、彼女の家まで車に乗っけてあげようと女子高生に話しかけている図だった。でも、家まで送るのなら、「途中まで」という言い方はしない。「俺の行く方向と同じだから、途中まで乗ってかないか?」という意味だったような気がしてきた。自転車がバス停の先の交差点を曲がると、僕の疑念はどんどん膨らんでいった。オッサンの車に乗った女子高生が人気のない場所に連れて行かれ乱暴されるかもしれないなどと考えた。でも、女子高生だってバカじゃない。知らない男の車に乗るということの危険性は充分わかっているはずだ。別に俺がお節介を焼くまでもない、変な想像してないで早く家に帰ろう。そう思うのだが、気になりだしたら止まらない。このまま帰ると気持ち悪い感情が残ってしまうので、二つ目の交差点を右に回り、さっきのバス停を再度通ることにした。オッサンがいなくて女子高生だけが残っていれば大丈夫だったと確認できる。そう思いながらバス停までやってくると、オッサンの姿はまだあった。でも、女子高生に背を向けて立ち去ろうとしていた。オッサンの歩いていくその先には地元の運送会社のトラックが停まっていた。どうやら、女子高生はオッサンの誘いを断り、諦めたオッサンがトラックに戻っていってるときだったらしい。よかった。オッサンが女子高生のご近所さんだったのかどうかは不明だし、本当はオッサンが好意で声をかけていただけかもしれないけれど、少なくとも僕が心配するような事態は起きなかったのだ。
と、安心しながらペダルを漕いで家路に向かったのだが、僕は根っからの心配性である。たしかに今回は何事もなかったし、あのオッサンがもともと親切な人だったのなら今後も問題は発生しない。でも、乱暴目的で若い女性に声をかけまくる悪人だとしたら、きょうは大丈夫だったけど、いつかトラブルに巻き込まれる女性がいるだろう。俺はそれを防ぐことができない。できるとしたら、オッサンのトラックのナンバーを確認し、警察に通報すべきだったのだ。そうすることで未然に犯罪を防げる可能性があったのだ。
でも、そこまでやらないよな、フツウ。