野田秀樹(25日朝日新聞「仕事力」)

日本の、特に都市生活は、「自分の脳を内側から使っていく力」を無くならせていると野田秀樹が言う。なるほど。都市生活でなくともそれは言える。
僕のことを「そもそも論が好きだ」と言った知人がいる。特に否定的でも肯定的でもない言い方だったけど、僕にとっては褒め言葉である。
僕が今いる部署では、毎年同じ事を繰り返す仕事がある。2年くらいで人事異動があるので、新しくその部署に来た人間は前任者が残した記録を真似て今年の自分の仕事をする。前任者は前任者で、やはり自分の前にいた人間のやり方を真似て仕事をしている。そういうやり方は効率的ではある(真似るだけなので時間がかからないから)、ほとんど間違いもない(間違いがあれば何年も同じ事を繰り返す中で改善されている)のだけれど、ときどき僕は、前の年のやり方を調べ直すことがある。つまり、「そもそも」はどうすべきかを考えるのである。そして、ときどき、前の年のやり方が間違っていることに気づいたり、自分がやっている仕事の意味に気づくことがある(真似るだけなら意味を知る必要はない)。
仕事じゃなくて私生活でも「脳を内側から使っていく力」を鍛えたい。でも、なかなかそれは難しい。難しいけれど、なんとなく生きて、死ぬときになって初めて、「ああ、俺は人生で何をしたのだろう」と悔やみたくはないなあ。