『日常生活の冒険』

日常生活の冒険 (新潮文庫)

日常生活の冒険 (新潮文庫)

30年くらい前に読んだこの本を読み返してみた。もちろん、粗筋も登場人物も時代背景もなにもかも忘れていたので、初めて読むように読んだ。
大事だと思うことがさらりと1行で済ませられたり、逆にささいな心情がくだくだと書かれていたり、どうにもよく分からない。話を盛り上げることを拒否しているみたいだ。だからといって詰まらないわけでもない。
あの頃の僕は大江健三郎の小説が大好きだった。「レインツリー」やイギリスの詩人(名前が思い出せそうで思い出せない)が作品中に頻繁に出てくるようになってから全く読まなくなったが、それまでの大江作品はそれこそ貪るように読んでいた。だから詰まらないはずはないし、実際、読み終えたあとに満足感はあるのだけど、エンターテインメント性の強い小説ばかり読むようになってしまった僕は、大江のよさが分からなくなってしまったのだろうか。
解説を読むと、とても難しいことが書いてある。若い頃は、難しいことを理解しようとやっきになっていた。
とりあえずもう1冊、大江作品を読んでみようと思う。

それにしても、30年前の文庫は活字が小さい。老眼になってきつつある目にはちょっと辛い。ルビは読めなかったりする。それはまあ虫眼鏡を使えばいいことだけど、カバーイラストはあいかわらず気持ちがわるい。今は違うみたいだけど。